国際法務担当者の筋トレ

三度のメシよりネゴが好き(ネコではない)。某社法務担当が日々気になるトピックを少しだけ深掘りします。

プロの感覚、アマの感覚

先週の火曜日、エビデンスの授業でビデオを観ました。 授業で扱っているルールは連邦証拠規則(Federal Rule of Evidence)の403条で 「証拠の証明力が陪審員の偏見を助長させる危険(他にも裁判の遅延の危険とかいろいろ5つ)よりもまさっている場合、その証拠を提出することが認められる」 というもの。 そのビデオは、実際の事件の記録を元にハーバードの企画で撮ったものだそうです。 先生の話からすると、ご本人出演らしい。 よく考えてみるとすごい話だ。(法律家と証人の監察医以外は役者さんだったのかな?) <事実> 被告人ルーピンソンは酒場のオーナー。 妻が自分の会計士と浮気しているのを知って、酒場の客に金を渡して妻と会計士を殺すように依頼。 ルーピンソンは、ヒットマンが妻と会計士をショットガンで殺した銃声を聞いて、現場に駆けつけ、ヒットマンを銃で撃った。 でもヒットマンは死なず、事件は明るみに。 <問題> 監察医が妻と会計士が殺された状況を説明するのに、現場写真を証拠として提出して、陪審員の前でスライドにして使用することができるか。 <監察医の証言> 監察医の説明は「ご覧のとおり、妻は頭を撃たれてます。死因はうんぬんかんぬん・・・」で、わりと淡白。 スライドは折り重なった死体がぼーん、あー派手に血しぶきついてるねー、みたいな感じ。 最後の2枚は学生にはインパクトが強すぎる(too sensitive for students)という配慮で、スライド上映の途中でビデオが正式に終了。 さて あなたはこのスライドを証拠として採用して、陪審員の前で上映した裁判官の判断は正しかったと思いますか? この質問を上映直後に先生がしたところ、どうやら大方の学生が「よくない」ほうに、手をあげたようです。 隣に座っている日本人の弁護士さんは「なんでこれが駄目なの?」と小声で叫んでおられました。 私は正直、写真のインパクトが大きくて(わりとグロには強いはず)発作的に「よくない」ほうに、手を挙げてました。 発作的に決めたあと「なんでこれが駄目なの?」への反論を考えてたんですが、たぶん陪審員はこのスライド観たら「被告人は悪いやつだ!」って刷り込まれてしまう気がしました。この事件の争点がどこかはさだかではないのですが、たぶん依頼の有無のほうが重要なわけです。それがぼやけてしまうんではないかと。 先生の結論は「この監察医はスライドがなくても説明できたよね」というわけで、許可しないほうがよいということを言っておられました。 アマの感覚とプロの感覚って違うんだなぁ。