劇場型弁護士
先週の火曜日、エンロン事件で主席検察官だった方の講演会がありました。
テーマはそのものズバリエンロン事件の裏側。
陪審裁判で勝つ秘訣は、credibility(信頼性)なんだそうです。
陪審員は審議の前に、裁判官から法律の説明などが
書いてある
jury instructionというのをもらうんですが、長いし難しいので
ほとんど皆読まないとのこと。
陪審員は「どっちのいうことが信用できるか」で、結局決めるんだそうです。
エンロン事件のトライアル・テーマはlie and choices。
被告人たちは、正しいことをする(エンロン社の実情を公表する)
ことができたのにもかかわらず、嘘をつくことを選択したんだというのが肝だったそうです。
陪審員にsense of journeyを与えたかったので、エンロン社の建物の写真を
冒頭陳述のパワーポイントにとりいれ、
「とても立派な建物です。この会社は全米○位の業績を誇り、アメリカが誇る有数の優良企業でした。しかし、この扉の向こうは欺瞞と虚栄に満ちていたのです。さて、我々はあなた方をこの扉の向こうへとお連れしましょう。」
とやったそうです。
(私の記憶力と語彙力じゃこれが精一杯だが、もっとグッとくる感じだった。)
他にも、実際に法廷で使ったパワーポイントのスライドも講演のパワポの中に登場。
とにかくシンプルな言葉で、陪審員がconnect(感情移入)できる
ように裁判を組み立てていく手腕には圧巻でした。
時間ギリギリに行ったので、一番前に座る羽目になったんですが
結果的には、超一流のトライアルロイヤーを1メートルの至近距離で
観察することができて、大正解。
彼はいかにも賢そうな外見をしていますが、それでいて冷たい/油断できない感じ
ではなく、むしろ温かい/信頼したくなるような雰囲気を持った
人でした。
彼の頭の良さは話をすればするほどにじみ出てくるのですが、
相手に警戒感は全く与えず、
逆にこの人の言うことなら本当なんだろうというキモチになります。
語彙はシンプルなのに、相手にくっきりとメッセージが伝わる話術と
ときおりまぜるユーモアは観客をひきつけて離しません。
彼の弁論/講演はエンターテインメントとしても成立していました。
それでいて、けれん味なく、地に足がついています。
正統派の素晴らしいトライアルローヤーなんだと思います。
彼のような劇場型弁護士。
日本にも登場するのでしょうか。